厳しい厳しいと言われております賃貸住宅業界は、創業期・成長期・安定期を経て現在は衰退期の終盤にあります。他の業界も厳しい業態は多いものの、今はAI・IOT・ロボット・インバウンドビジネス等が成長期にあります。
それでは、我が賃貸業界が今後どの様になるのか気に掛かります。以下人口動態から見る今後の賃貸業界動向を考えてみましょう?
1)人口の減少 ⇒2020年から2025年にかけて急激に減少します。
2)高齢化の進展 ⇒2025年に団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる。
3)単身世帯の増加 ⇒2040年に総世帯数の4割が単身世帯となる。
その要因は「核家族化」「未婚化」「高齢化」によるものである。
4)労働力人口 ⇒2025年には583万人の不足が生じる。
その解消手段として「生産性向上114万人」「女性労働参加313万人」「高齢者労働参加121万人」「外国人労働34万人」の予測がある。
5)職住接近 ⇒郊外から都市部への人口移動が進む。
6)インバウンド ⇒国は2020年に4,000万人を達成する目標を掲げている。
7)ペット飼育世帯 ⇒2017年度1,268万世帯で今後横ばい予測
以上が今後の賃貸業界に影響を与える現象予測であるが、その7つの予測から考えられる賃貸需給予測をしてみたいと思います。
1)人口の減少は賃貸物件の空き室増加の大 きな要因となります。又、空き家の増加が大きな社会問題化しておりますが皆様方の近隣にも空き家が増加している事を実感されている方が多いものと思われます。
空き家は今後益々増加し2033年の空き家率は30%に達するとの予測が有ります。
私も京都市の空き家相談員をしておりますが、各自治体は「我田引水」自分の地域への住人誘導ばかりに躍起になっているのが実態です。しかし移住が発生すれば何処かの地域の住人が減少するのです。空き家の活用は住居以外の活用も必要です。用途地域にもよりますが、地域住民の為の集会所、公園、介護用施設、民泊物件、事業用物件等々の住居以外の転用を促進する必要があります。
2)高齢化の進展は、
高齢化により年金、医療費等の急増から財政悪化を招いておりますが、賃貸住宅に関しては、有料老人ホーム、サ高住等の増加から平均的な年金受給者の受け皿は完備されつつありますが、国民年金のみの高齢生活者等の低所得者層は、受け皿が不足し住宅難民が増えつつあります。
国は住宅セフティネットを促進しておりますが、耐震の問題等で対象外の建物が多く普及は厳しい感があります。
今後は民間を含めて英知を絞り受け皿を増やす必要があります。
3)単身世帯の増加は、今後20数年後には10世帯中4世帯が単身世帯となり
大きな社会問題化すると思われます。又そのことは生活様式を大きく変える事になります。近年の賃貸住宅では単身用の間取り(1LDKタイプの30㎡から50㎡)が増加しており将来の単身世帯の受け入れに対応しているものと思われます。
4)労働人口の減少が賃貸住宅に与える影響としては、外国人労働者の増加が考えられます。日本政府も在留資格を10年にする等の方針であり今後とも外国人労働者が増加する方向です。
賃貸住宅としても外国人労働者の受け入れに対するノウハウを積んで行く必要がある様です。
5)職住接近の傾向は今後も続いてゆくものと思われます。特にアクセスのよい場所への移住が多くなると思われ、政策的にもスマートシティ構想が進み生活基盤が拡充されるに伴い益々移住が進むものと思われます。郊外物件・駅遠物件・築古物件等の賃貸物件の出口戦略を考える必要が出てきます。
6)インバウンドの需要は今後も拡大すると考えられます。特に京都は世界でも有数の観光都市であり観光客も多くインバウンドの影響は大きい。
賃貸業界としては民泊需要も高く、多くの民泊がつくられております。しかし民泊は宿泊数180日の制限が有り、京都市では共同住宅・観光地・住宅地近くでの民泊は制限の強化が図られており、殆どが簡易宿舎での開業が多いのが実情です。又ホテルは14年~15年開発を計画したホテルの開業が相次ぎ20年には3万3千室となり、必要と見込まれる客室数を1万1300室上回ることになる予想であり、京都のホテル需要は20年に鈍化するとの見通しがあります。賃貸住宅を簡易宿舎にする、新築簡易宿舎の建築等の事業が増加するものと思われます。
7)ペット飼育の需要は現在ピークとなっておりますが、阻害要因の第2番目である賃貸物件が飼育禁止になっている要因を飼育可にすれば増加する要素はある様です。現在全国のペット可物件は18.7万件で賃貸物件数631.8万件の僅か3%に過ぎません。
今後はペット飼育の阻害要因を減らし、期待されているサービス「旅行中の世話」「高齢・ペットの老化等で飼育不可となった場合の受け入れ施設」等々の対策を行ったうえで、ペット飼育可の賃貸マンションも増やす必要がある様です。
以上今後予測される現象において、賃貸住宅の果たせる役割を今後の賃貸住宅経営に活かして行くことが重要であると思います。
現在の王道を歩む賃貸経営とは、アクセスのよい駅前立地で、高層のRC造、間取りは50㎡の1LDK、設備は最新で高級なラグジュアリー物件を運営する賃貸経営であり長く稼働率が保たれ高収益が確保できると思われます。
賃貸住宅の需給関係の崩れる中、競争力ある築浅の賃貸物件は一般受けする賃貸マンションでも稼働率は十分維持できると思われますが、築古物件は稼働率の維持は難しい状況に追いやられるものと思います。
人口減少も直ちに影響するものでは有りませんが、徐々に影響が及んでくるものであり今から十分な準備が必要です。
時代の流れは加速度的に早くなっております。今言っている事は正しいかもしれませんが、10年後はもしかして間違っているかもしれません。今から新築を考えられている家主様は十分な検討をされ望まれることが必要です。
とまとハウス 代表者 粟野 則夫
宅地建物取引士・不動産コンサルタントマイスター
ファイナンシャルプランナー・賃貸不動産経営管理士
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