(平成24年8・9月号) 第92号
猛暑もいよいよ終盤、もう少しの辛抱です。一歩一歩秋に向かつています。
今月号では、賃貸物件の空室を如何に埋めるかのテクニックについて考えましょう。
【現在の賃貸需要状況について】
現在の賃貸状況について、3・11の大震災以降、日本の人口は東日本より西日本に人口の移動が起こっております。
その関係で京阪神地区の賃貸物件の稼働率が多少改善されておりますが、顕著なものではありません。
しかしマンスリーマンションの稼働率は高いものとなっております。その事は一時的に関西圏に避難されておりますが、その後については東日本の復旧・復興が終われば戻られるのか、そのまま関西に居住されるのかは予測が付きません。逆にこれも一時的ですが、東北復興の為に建築職人さんをはじめとした復興関連事業に携わられている人たちは東北に行かれており、仙台のホテルは稼働率が大変に高くなっているようです。
復興需要で景気も一時的に良くなっており、土木建築業者は大変に忙しい様ですが、この景気も一時的なもののようです。
何れにしても、関西圏の賃貸事情は多少の改善はみられるが一時的なものであり、今後の賃貸需要人口の減少から長期的には厳しい状況が続くものと思われます。
【供給事情について】
近年の賃貸住宅の供給は金融動向によって大きく左右される傾向に有ります。
最近では長期金利の低下から調達コストが減少しており供給を押し上げる要因にもなっております。又一時不調だった不動産投資信託が復調しており、益々住宅を金融的にとらえる傾向が強くなっております。
賃貸住宅の着工戸数を見れば、昭和50年代より急速に増加した賃貸住宅は昭和62年にピークに達し、平成12年には半減した。
その後平成18年迄は6年連続増加となったが、平成19年度「姉歯問題」で△18.9%、平成21年度「リーマンショック」要因で△30.8%となった。
平成19年 平成20年 平成21年 平成22年 平成23年 平成24年
戸数 44万戸 46万戸 32万戸 29万戸 30万戸 31万戸
増加 △18.7 +5.2 △30.8 △7.3 +0.1 +5予測
今後は、少子化等の要因で長期的には減少傾向が続くものと思われますが、現行の低金利が続く限り「金融商品」と見なされる賃貸住宅は大きく減少することは無いものと思われます。
従って、年間30万戸近い賃貸住宅が供給され、人口は減少しており供給過多が予測されます。
【空室を埋めるテクニック】
賃貸住宅の環境は上記の通り、賃貸住宅=金融商品と見なされる限りこの低金利の時代に、10%近い利回りが確保出来る金融商品は皆無に等しいことから、人口が減少して行くにも拘わらず供給過多の状態が続いている事は前項で記載しましたが、今後も低金利が持続される限り賃貸住宅の供給は続くものと思われます。従って、古い賃貸住宅は空きが目立ち始めており埋まる気配もないのが実態です。
その様な中で、空室を埋めるのは大変な苦労が必要となってきます。
その対策を記載して行きます。
【空室が埋まる絶対要件と相対要件】
空室が埋まる絶対的な要因としては
1) 入居者が求めている部屋の広さ、間取り、場所であるか?
2) 入居する時の期待予算内の物件か?
以上の2大要因で決まります。
要は、入居者の「家族全員が物件内で快適な生活ができるのか」「家財等が部屋に収まるのか」「通勤・通学に適した立地か」が一つ目の大きな要因で、二つ目がその物件を借りる場合の家賃が所得に見合っているかであります。
相対要因として
1) 周辺の環境(買い物、役所、日常利用店舗、病院、公園等)
2) 部屋の設備(防犯鍵、テレビドアホン、エアコン、シャンドレ、システムキッチン、フローリング、追炊風呂、セパ、宅配ボックス、インターネット無料、オートロック、防犯機能等々)
3) 建物外観(広いエントランス、現代風の建物、お洒落な建物等)
4) 募集の強化(仲介業者対策、募集方法、広告強化等)
以上の通りです。
【その対策】
よく家主様から「如何したら空室を埋められるのか」と相談を受けますが、相対要因ばかりに目を向けて改善はされておられますが、絶対要因を考えておられない方が多い様に見受けられます。
ターゲット即ち、どの様な家族層を求めておられるのかを明確に(市場調査をしその場所で多く求められる入居者層)ターゲットを絞り、需要の強い部屋をつくる事であります。
又、その様な部屋をつくったが「家賃が高い」では入居は決まりません。
絶対要件を重視した取り組みをすることが重要です。
又同じ条件であれば当然ながら相対要件の良いところで決まるのは確かですので、余裕が有れば相対要件も改善をして行くのも必要であると思います。
【差別化による対策】
以上以外での部屋を埋める方法は、その地域での需給関係の調査を行い「供給の少ない物件」を建てる、或いはリノベーションする事が他物件との差別化につながると思われます。
賃貸家賃の過去10年間の推移を見ても、戸建貸家の家賃は横ばいが続いております。差別化した物件の家賃は下がらないものと思われます。
今後も皆様方のお役に立てる情報をお届け致します。
とまとハウス 代表者 粟野 則夫
宅地建物取引主任者・不動産コンサルタント技能者
ファイナンシャルプランナー・賃貸不動産経営管理士
Copyright(C) tomato house co.,ltd. All Right Reserved.