(17年4月号)
4月号では、入居者が退去時に行う原状回復のトラブルについて考えて行きたいと思います。
近年の現状
近年、賃貸住宅の契約等について国民生活センターへの相談が増加いたしております。「退去時にクロス、カーペット等の費用を差引きされ敷金が戻らない上、追加料金を請求された、入居時に新品でなかったのに納得がいかない」等の退去時の敷金返還に係るものが多い。
国民生活センターへの相談は年々増加しており、又小額訴訟の多くが敷金返還に関するトラブルであります。
争点は賃貸借契約で、借主の「原状回復」義務の解釈であります。
ガイドライン
平成16年10月に、東京都による「原状回復問題に関する条例「東京ルール」が施行されました。又平成16年2月に改定されましたガイドラインによれば原状回復とは「賃借人が借りた当時の状態に戻すことではない」ことを明確化した。
借主の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、建物の損耗は大きく分けて2つあります。
① 経年劣化、自然損耗(通常の生活で通常の使用による劣化、損耗)
② 借主の故意、過失、善管注意義務違反、による劣化、損耗
ガイドラインの原状回復の定義は前記②による建物の損耗を復旧する事と定義しています。
従って、前記①での訴訟ではことごとく貸主の敗訴に終わっております。
今後の対応として
出口での問題解決策は入口(契約時点、入居時)に原状回復について明らかにしておく必要があります、経年劣化、自然損耗は家主負担であることを明確にし、敷引金、礼金で経年劣化、自然損耗部分の原状回復費用に充当するよう明確化しておく、但し敷引金、礼金で当該部分の改装費がまかなえる金額提示をしておく必要が有ります。
又はある業者さまの手法では定額補修分担金(退去時には返金されない)を経年劣化等の費用に充当することを明確化して契約をされております。
しかし、2001年4月施行の「消費者契約法」が実施されてから、関西地区でおこなわれている契約の際の敷引き特約は無効であるとの判決が大阪簡裁においてありました。
その判決内容は「敷引きの慣習は公序良俗に反するものではない」とした上で、貸主側が敷引きの趣旨や内容を説明していない点や、入居期間が半年程度であった点を考慮したとの事である。
よって今後は、契約或いは重要事項説明の際、敷引きの趣旨や金額を明確にし、入居者に対し説明を確実に行い了解を得る必要があります。
今後益々、家主、入居者とのトラブルが増加するものと思われます。
入口部分での対応が重視されれば、出口部分でのトラブルは減少するものと思われます、注意しましょう。
今後も皆様方のお役に立てる情報をお届け致します。
とまとハウス 代表者 粟野 則夫
宅地建物取引主任者・不動産コンサルタント技能者
ファイナンシャルプランナー・賃貸不動産経営管理士
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