(平成22年7月号) 第67号
今年の梅雨は雨量の多い年で、各地に災害をもたらしております。ゲリラ豪雨のため事前に十分気をつけて準備しておきましょう。
最近家主様からのお問い合わせで、更新料の問題で意見を聞きたいとのお話がよくあります。
それだけオーナー様にとって大変関心が高い問題であると思われます。
更新料については、現在最高裁で争われておりますが、今後の見通しと我々が早期に実施しなければならない対策について記したいと思います。
【裁判の進捗】
賃貸契約更新料を徴収する契約が、消費者契約法上有効かどうかを争った訴訟で、控訴判決が5月27日に大阪高裁でありました。
その内容は、「家主側の利益確保を優先した不合理な制度だと」し、契約条項を無効とした一審の京都地裁判決を支持、家主側の控訴を棄却した。
これにより、高裁レベルでの判断は、「無効が3件」「有効が1件」となりました。
更新料が有効と認められたのは1件のみの結果です。
今後は、それぞれの裁判が最高裁に控訴されており、その結果が注目されるところです。
【今回の大阪高裁の見解】
(大阪高裁の判断は)
1) 借地借家法には、更新を拒絶する正当な理由がなければ自動更新されるとの強行規定があるのに全く説明をしていない。従って借主は自動更新の場合は更新料支払いの義務がない事を認識しないまま契約をしている。
2) 貸主と借主は情報収集力に格差があり、自由に条件を比較できず、取引は対等とは言えない。
3) 下記の更新料の法的性質があるが、その法的根拠について借主に説明がなく、更新料には安いとの印象を与え契約締結を誘う役割しかない。
4) 消費者契約法10条に違反している。
以上が今回の控訴棄却の理由である。
それぞれの裁判での争点は少しずつ違いますが、上記の点で認めるか、認めないかの見解が大勢であると思われます。
(更新料の法的性質)
1) 更新料拒絶権放棄の対価である
2) 賃借権強化の対価である
3) 賃料の補充の性質をもつ
以上が更新料の法的性質であります。
(更新の方法)
合意更新・・・借主・貸主双方の合意に基づく契約更新
法定更新・・・双方の合意がなくても、法的に更新したものとみなす契約更新
メリット・デメリット
合意更新・・・保証人が合意しない場合は、保証人がなくなる場合がある。
法定更新・・・保証人が外れる事は無いが更新料を貰えない場合がある。
【今後の裁判の流れ】
現在更新料訴訟については、最高裁での争いとなっており近い将来に最高裁での判断が下されるものと思われます。
飽くまで私見ですが、賃貸契約の更新料は最高裁で認められないのではないかと思われます。
万一最高裁が更新料は消費者契約法10条違反との判断を下した場合、最高裁の判断は法律的に見れば絶対的であり、以前に起きた貸金業の過払い金請求と同じような状況になる可能性があります。
直近では、年金型生命保険が相続税と所得税の二重課税ではないのかとの訴訟で、最高裁判断は二重課税を認め国の敗訴が決定した。
国(財務省)は徴収した税金を還付する意向を示している。
従って、更新料が最高裁において認められない場合は、返還請求が相次ぎ市場が大混乱する可能性も考えられます。
【今後の対応策】
消費者契約法が施行されて以降、消費者を守る傾向が強化されて来ております。又、消費者庁が設立された事からも、今後ますますその傾向は強まるものと思われます。
我々賃貸業界に携わるものとして、この業界を良くするためにも消費者に受けいれられ難い制度は改正しクリーンなイメージ創りに努力する必要が有ると思います。
今後の対策としては
1) 出来る限り更新料の徴収をやめる。
2) 市場原理から考えれば難しいが、減収分を月額賃料に上乗せする。
3) 途中解約型清算一時金として設計する
4) 月額賃料上乗型か解約一時金型の選択制の設計をする
5) 定期借家契約で、再契約手数料制度に移行する。
等々色々と考えられますが、今後契約を明確にするためには、更新料を取る為の方法ではなく、飽くまで賃料に一本化し、消費者が明確に賃貸物件の費用が比較できる体制を業界全体がとる事が重要ではないかと思いますが如何でしょうか?
今後も皆様方のお役に立てる情報をお届け致します。
とまとハウス 代表者 粟野 則夫
宅地建物取引主任者・不動産コンサルタント技能者
ファイナンシャルプランナー・賃貸不動産経営管理士
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