3月に国土交通省から地価公示が発表された。都市と地方、都心と郊外の地価の色分けが明確になって来ている。
地価は需要と供給できまりますが、現在の土地需要の担い手は「分譲マンション業者」「物流関連施設」「観光産業」「ホテル」「リートを含む収益物件投資家」である。
分譲マンションはリーマンショック以降都心部の地価が下落し、生活に便利な駅前、都心部に高層マンションを始めとした分譲マンションが次々と建築され、飛ぶように売れた。しかし現在は地価・建築コストの上昇から都心部の分譲マンションは高嶺の花となり売れ行きは急激に減少している。
物流関連施設は、アマゾンを始めとしたインターネット通販を背景に、物流拠点施設、大型トラックの駐車場等の建築用地の確保の為に、高速道路のインターチェンジ近辺の土地の不足感が出てきている。
観光産業はインバウンドの増加に伴い、観光地に至る道路付近、観光地の近辺は軒並み物件不足となっており、地価相場が読めない状況が続いております。
今後も引き続きインバウンドは増加を続けるものと思われますが、何時まで続くのかは不明です。
ホテル業界も日系・外資系を含め高級ホテルが日本での新規開業を積極化している。京都でもフォーシーズンズ(開業)、マリオット、ハイアット、ヒルトンが開業予定である。
大阪ではアパホテルが分譲マンション業者と土地取得合戦を繰り広げたが、アパホテルの提示した額に分譲マンション業者は遠く及ばなかったとの事であり、ホテル業界は強気の開業ラッシュとなっている。
投資収益物件をリート或いは個人投資家が挙って購入に走っており、良い物件の獲得合戦が続いております。平成29年3月26日日経新聞一面に「アパート融資異形の膨張」と題して、金融機関のアパート融資に金融庁が警鐘を鳴らしている。
以上が地価公示の状況であるが、人、物、金の移動する場所は地価が上がる事になる。果たして何時までこの様な状況が続くのか? 地価の行方は?
日銀の金融緩和策により、金融機関の低金利による積極的な融資先確保の活動が続きました。しかし消費の低迷から法人は資金調達を控え、銀行は運用難から行き場のないお金を、地方銀行を中心として個人融資に傾注して行った。
相まって、2015年より相続税法が改正され、相続税対策の為にアパートの建築ラッシュが始まった。その結果、アパートの過剰が顕在化している。
先日の新聞で大東建託の熊切社長は、2008年より人口は減少しているが、世帯数は減少していない。又古いアパート・マンションが淘汰され減少して行くので、まだまだ新築アパートの需要はあるとの強気の見解である。
しかし、世帯数は2019年より減少に転じるとの予測があり、今後は人口、世帯数とも減少幅が年々増加して行く予測である。
一方、新築アパートは建築ラッシュが止まらない状況にあり、古いアパート経営も現時点では、あまり廃業された話は聞いたことがありません。
但し、人口が減少、世帯数が横ばいの現象は、1世帯当たりの人数が減っていることであり、大家族時代から単身世帯へと変貌しているのが実態である。
従って、単身世帯の増加により部屋の間取りは変化して行くものと思われますが、基本的には入居者は減少し、部屋余り現象が顕在化することは確かなようだ。
以上の様な状況下、今後古いアパート経営を如何するのかとの議論が始まるのは時間の問題であると考える。
その為には今からその対策を考える必要に迫られている。
基本的には、人口・世帯数が減少することは明白であり止めることは出来ないので空き家が増加することになり、空き家を減らす事が社会問題化する。
現在戸建住宅の空き家対策は国及び地公体が積極的な取り組みを行っていますが、賃貸住宅の空き家対策は、そこのアパートに住んでおられる人がいる限り対象外である。いずれ古いアパートの出口戦略を考える時期が迫っている。
出口戦略には、「アパート経営を止めて物件を売却する」「新しい物件に建替える」「物件を再生する」「そのままにする」等々の方法があります。今回は、再生の対策について次に記載します。
古くなった賃貸物件の部屋付けをするには、賃貸条件を緩和して空き部屋を決める方法即ち、「賃料の減額」「敷金・礼金の減額」「数カ月間のフリーレント」「審査を緩める」行き着く先が、保証人なしのゼロ賃貸(初期費用ゼロ)での募集をするケースもあります。
その様な対策は積極的な対策とは言えません、賃貸物件は年々経年劣化するものです。当然何もしないで20年以上経過した物件は賃貸条件を緩和する必要に迫られることになりますが、新築同様にすることは大変な費用が掛かることになり費用対効果が生まれません。
出来る限り劣化を防ぐ、劣化を遅らせる、費用対効果範囲での改装をする、等々、オーナー様のアパート個々の状況によって期間を定め計画を立て対策を講じて行くことが重要となります。
それでは、古くなったアパートを再生するとの結論に達した場合は、先ず対象物件の徹底調査を行います。
対象地域の人口動向調査・市場調査、同質物件の相場、入居者ニーズ、競合物件の調査、等々を行い、その結果を基にどのような物件に再生させるのかを決めるのである。
詳細調査結果を踏まえた再生計画を立案すると同時に「建物全体の改装」「部屋の改装」の改装見積もりを取り、収支計画を作成する。
その際の改装工事はあくまで調査に基づく、入居者ターゲットのニーズに合ったものでなければなりません。
又、ターゲットの好むデザイン、差別化した部屋造りの技術を駆使した改装でなければなりません。
特に現在では、多くの新築賃貸住宅が建築されており、その設備、間取り等々は現在の入居者ニーズにマッチした造りです。
今後増加する賃貸住宅は、「金太郎飴」の様な、何処にでもある部屋を造るのではなく、差別化したものに仕上げることが、今後の入居率に大きな影響を及ぼすことになります。高齢者住宅、外国人住宅、ペット同居型住宅、戸建賃貸、等々です。その為には賃貸ニーズを多く持っている業者、デザイン技術を持っている業者、計画、提案、工事方法の立案が出来る業者でなければなりません。
終われば後は野となれ山となれではオーナー様も困ります。
最後まで継続的に入居付けをしてくれ、責任をもって賃貸経営に関わってくれる業者でなければなりません。
今後出口戦略を考えてゆく上でのご参考になさって下さい。
とまとハウス 代表者 粟野 則夫
宅地建物取引士・不動産コンサルタントマイスター
ファイナンシャルプランナー・賃貸不動産経営管理士
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