(平成23年8月号) 第80号
残暑お見舞い申しあげます。
まだまだ暑さは続きます、ご自愛下さい。
更新料訴訟の最高裁判決が7月15日に下りました。
更新料特約は有効であるとの判決であります。
【最近思う事】
8月20日に本情報誌を書いておりますが、連日マスコミによる「円高」の二ユースが報じられております。
ご承知の通り、円高ドル安の原因は日本の経済が強いのではなく、米国の債務問題、即ち国の借金が膨れ上がりその懸念から米国国債の格付けが引き下げられたのが主な要因です。
一方、欧州でもギリシャ問題に端を発し欧州全体が揺れている状態であります。
その為に相対的に判断した投資家が比較的安全な所に資金を向けており、その結果、スイスフラン、円、金等々が急騰しているのが実情であります。
決して日本円が強いから買われているのではないのです。いま先進国は財政赤字と債務問題が表面化しており、ケインズの言う財政出動による景気回復策が限界であるにもかかわらず、相変わらずの対策を推進した結果である。
日本の国債残高は900兆円を突破しました、しかし他国と違いその国債は日本の国民が所有しており、国家の意思は守られるとの理由から比較的に円が買われているのであります。
2008年のリーマンショックは金融問題でありましたが、今回は先進国の債務問題であります。何れ近い将来この債務問題は大きな問題となるのは明らかでしょう。現在の円高は75円台を付け史上最高値を更新しており、日本の経済に大く悪影響を与える状況となっており、原発問題に伴う電力不足と相まって国内景気悪化の要因となっており当面は現状が続くものと思われます。
東日本大震災の被災者の方々には大変にお気の毒であると思っておりますが、政治の機能不全で対策が後手後手となっており(なぜ増税議論が先なのか、復興債の方が早い結論となるのではないのかいささか疑問ですが)未だ復興の目途さえたっておりません。
円高、電力不足による電気料金の値上げ、法人税率の引き下げ見送り等々は企業を直撃し、国内にとどまる事のデメリットから、海外進出を図る企業が増化するものと思われます。
企業が国内から出て行く事は国内景気の悪化、雇用問題に繋がりますが、日本の対外政策の拙さ、上記の国内問題等々から当然の事であると思います。
早い政治の安定を期待したいと思います。
今後の見通しとしては、震災復興に要する費用は「がれき」の撤去費用だけで1兆円必要とのことで、復興費用総額は20兆円~30兆円が必要であるとされております。(被災者には大変な状況下、景気の話は無礼千万でありますが)
復興費用は国(国民)が負担する事となり、同額の財政出動と同じ効果をもたらすものであります。この事は一時的に景気を良くする要因となります。
又、今の円高傾向はどんどん円高に振れるのではなく何れ米国経済が回復すれば反転し円安になるものと思われ、輸出企業も業績が回復し、来年には景気も少しは良くなるものと思われます。
現在大企業に限らず中小企業を含めた多くの企業が海外進出をしておりますが、日本は太平洋戦争以来戦争をしておりません(決してしてはいけない)が、私個人的には企業の国外進出はイコール戦争による植民地政策と何ら変わらないものであると思っております。
そのことは企業の海外進出により、安い労働力で製造した物を現地で販売するいわゆる出稼ぎであり成熟した国内では決して出来ない事であります。
今後は、製造業が経済を復活させる原動力となるのではなく、日本の高い技術力で出稼ぎをする、その稼いだお金でサービス業を中心とした事業を起こし国内雇用を創出し景気の回復を図り豊かな生活を送ることが必要であると思います。その為には日本国内の不況下、政治が官僚の言いなりになりドサクサに紛れた増税議論をするのではなく、復興債による震災復興財源を早急に確保し、増税は国民に国の財布の中身を全て明らかにし、歳出の削減を優先し、時間をかけて議論し豊かな福祉国家を作る為に議論を尽くす必要が有ると思いますが如何でしょうか?今後は政治がリーダシップをもって停滞する日本国を引っ張って貰いたいものである。
【更新料最高裁判決】
最高裁の判決文を読むと難解な言葉が羅列されておりますが、今回は簡潔にわかり易く記載を致します。
○更新料裁判の起こった理由
そもそも更新料は、大阪を中心とした関西圏、東京を中心とした関東圏の一部でのみ存在するものであり、日本全国に存在するものではありません。
特に京都、東京は学生が多く過去の様に部屋の数より入居したい人数が多い時期は、礼金、更新料と言った類の費用を貰っていたのが実情でした。
しかし時代は変わり、入居希望者よりも部屋の数の方が多くなって来た今日では、入居者の意見が強くなりあちらこちらで訴訟がおこるようになりました。
今回はその訴訟の内3件が最高裁で争われる事になりました。
○訴訟の要旨
更新料は、消費者契約法第10条により無効であるとの訴訟がおこされました。
消費者契約法第10条の条文
民法、商法(明治32年法律第48号)その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法1条2項に規定する基本原則(信義則)に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。
○最高裁の判断
更新料条項は同法に該当せず有効であるとの判断です。(裁判官全員一致)
○最高裁の判断理由
①更新料は賃料の補充、先払い、賃貸契約を継続させるための費用等の性質があり合理性がある。
②契約時に双方が合意し、賃貸借契約に明確に記載されている。
③本件の更新料は賃料の額、賃貸期間等に照らしても、高額すぎない。
(3件の内一番高額なものは1年契約の更新料2カ月分である)
○上記判決を踏まえた、今後の対応として
① 貸主と借主の間に更新料の支払いに関する明確な合意を行い、契約書に更新料を具体的に記載しておく事。
② 更新料金額が、契約更新期間に照らし高すぎないように注意をする事。
上記①、②について十分に注意し対応する事が必要です。
【結論として】
更新料、礼金、敷引き金等は有効であるから貰うと言うのは、貸主側の一方的な倫理であります。
昔と違う需給関係となった賃貸業界では、借主にとって分かりにくい料金形態では他物件との比較がしにくいのが実態です。
賃貸住宅管理協会では、比較がしやすいように4年間の賃料合計とその間に発生する礼金、更新料等の費用を合計しその額を1ケ月換算して借主にとって比較のしやすいように表示して募集をしているのが現状です。
今後は、初期費用としては敷金以外は貰わず、シンプルに月額家賃で比較できる様な時期に来ているのかもしれません。
更新料は有効であっても、市場が判断しこの様な制度を変えて行くのが時代の流れではないでしょうか。
今後も皆様方のお役に立てる情報をお届け致します。
今後も皆様方のお役に立てる情報をお届け致します。
とまとハウス 代表者 粟野 則夫
宅地建物取引主任者・不動産コンサルタント技能者
ファイナンシャルプランナー・賃貸不動産経営管理士
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