(平成22年1月号) 第61号
新年明けましておめでとう御座います。本年も引き続き皆様方にお役に立つ情報をお届けして参ります。何卒本年も宜しくお願いを申し上げます。
年頭に当たり、今後の不動産マーケットの予測について考えてみましょう。
【過去の不動産マーケット】
バブル崩壊により、地価の右肩上がりの上昇と言う土地神話が終焉を迎え、その後不動産に新しい仕組みが導入され金融と不動産が切り離せない関係になり証券化が進みました。その際にDCF法、J・REITが不動産マーケットに導入され誰もがその市場に参加できるようになり発展してきた。その結果日本の銀行は不良債権処理に目処がつき、リーマンショック以前は活発な銀行融資が行われ不動産市場に潤沢な資金が振り向けられ、ミニバブル的な様相を呈しておりました。しかし米国のサブプライムローン問題に端を発し、その後のリーマンショックにより金融商品は傷つき金融機関の機能不全が起きておりビジネスモデルが機能していないのが現状です。
従って、不動産には資金が回ってこなくなっており、不動産を保有する主体が資金を借り換できなくなり物件を保有する事ができなくなっております。
売りに出しても買い手が付かず負のスパイラルに陥り価格が下落している状況であります。又企業のコスト負担力は低下し、その結果賃料が低下しているのが現状であります。
この様な状況になれば、銀行の貸し出しも抑制され益々借り替えが出来なくなり、出口が見えてこなくなる状況です。欧米の銀行は公的資金を受けておりますが、日本の銀行は傷が浅く大規模な増資での対応となっております。早く金融機関が健全化し積極的な融資が必要不可欠です。今のマーケットを回復させる為には新たな、資金供給の仕組も必要かも知れません。
世界を取り巻く問題が、金融から実体経済へとシフトし、不動産マーケットは次なるステージへ足を踏み入れることになりました。
【不動産需給関係の問題点】
日本の場合は、①少子高齢化による消費者人口の減少により消費が縮小している。 ②高齢化による年金、医療、介護に財政的な負担が顕在化している。 ③経済構造変化にともない、日本の労働賃金が高くなり生産拠点を国外に移転しで海外からの輸入品を消費者が挙って購入しおり、お金が国外に移転しGDPが伸びない。 ④ GDPは米国、中国が右肩上がりの成長を続けているが日本の場合は20年前より横這いとなっており昨年には中国に抜かれ世界第3位となる。
以上の点はこのような事態を放置した政治の問題であるように思います。
長期的な展望に立った日本の成長路線の戦略が必要であり、そのための強いリーダーが必要だと思います。
以上の問題点を鑑み、日本の不動産に関する問題点を考察すれば、人口が減少しているにも拘らず過去20年間景気対策として住宅の供給と需要を創出してきた。短期的には景気を下支えしてきたが、長期的にはストックの過剰として顕在化しており、現在日本全体の住宅ストックの中で、700万戸から800万戸の空きがある状態が最大の問題である。人口が減少し住宅戸数が増加することは危険であり、人口が減少する分、住宅ストックと新規供給を減らし需給関係のバランスを取れば価値の成長維持は可能であるはずである。
もう一方で、環境問題がクーロズアップされており、特に住宅から排出するCO2が多いとの問題点が取り上げられております、日本の政府はCO2排出量を25%削減すると世界に宣言し、コペンハーゲン会議COP15において後進国の反対があり明確な方向が示されていないのが実態です。日本の、建物の建設から運用廃棄に至るライフサイクルでのCO2の排出量は国全体の排出量の40%を占めており、自動車に起因する排出量の約2倍に及んでおります。
その為に環境に良い家を供給する必要に迫られておりますが、新築住宅を建て続けることは需給バランスを崩す事であり、今後は古い建物を壊し新しいものにする、スクラップ&ビルドの方向に進むのではないでしょか。
耐震改修が必要な住宅は1100万戸あると言われておりますが遅々として進んでいないのが実態です。 又築30年のマンションが100万戸に達すると言われており老朽マンションの建替えも大きな問題であります。
人口が減少するマーケットでは、供給をどんどん増やす開発型のやり方が通用しなくなった、今後は既存の建物を減らしながら付加価値を創造する必要があります。不動産の有効活用や環境配慮の観点から、よりよい高度な手法が必要なのです。
【不動産価格の予測】
長期的な投資理論と、短期的な上がり下がりは別物であります。
不動産のキャピタルゲインを得る方法は2つあり、1つ目は、数年単位で価格が上下するタイミングをみて売買を行う方法、2つ目は、日本の不動産の本来トレンドを見つけ長期投資を行う方法、その2つを区別する事が重要です。
外資系企業と外需に依存してきた企業は、オフィス需要を活況にしてきた。しかし世界経済の悪化で需要が減退してきております。又人口の減少から住宅需要も長期的には下降線をたどるであろうと思われます。
従って今後の長期的な不動産マーケットは縮小均衡となることは避けられないと思います。
短期的には不動産価格の上昇は考えられますので、不動産投資は短期的な波を捉えるか、長期的なトレンドを読んだ取り組みを行うかを明確にする必要があるとおもわれます。
しかし、今後は長期的縮小均衡トレンド予測を、なんらかの対策で押し上げ、安定的に成長をさせる事を考える事も重要であります。供給を減らし需給バランスを取る事が出来れば長期的な不動産価格を維持できるものと思われます。
一方不動産市場を狭域的に見た場合、不動産業界の常識として不動産の立地は非常に重要で、その価値は不変に近いものがあると言われております。逆に、市場価値がゼロに近いものを探して、独自の付加価値を生むのが良いと言われる方がおられますが、その付加価値が終わった段階での不動産価格は再びゼロになっております。
立地により不動産価格は二極化するものと思われます。立地とはその不動産が生み出す収益性が高いもの、住宅であっても予想賃料で得られる収益が高いものが良い立地にある不動産であります。
不動産価格が上るときは素人でも不動産事業は経営できるが、下るときはプロ以外生き残れない時代になっております。過去にあったような「楽な大家業」は長続きする時代ではないのかも知れません。
【今後の長期トレンドで不動産価格維持の対策は?】
欧米の住宅は、良い建物を造り、定期的な手入れを行い、長く使う事を重視している。しかし日本の住宅の場合は優良ストックとしての条件を満たしていない住宅が多く、空間の狭さ、エネルギー効率の低さ、耐震性の劣る住宅、老朽化の激しいものがあり、設備更新や修繕、改修等を低コストで出来る状況にないのが実情です。又、柱、梁などの構造体を残して解体し用途、機能を変更・追加し性能を向上させる技術開発が進んでおりますが、再生建物の「土台」となる既存構造体が耐震性などの条件をクリアーしていることが必要です。
質の良いものは適切なリノベーションを施したうえ残し、低質のものは建替えで高質なものに代替をすすめると言った考えが必要であると思われます。
又、日本の分譲マンション市場は、十分に住宅戸数は満たされており、一方で人口は減少して行きます。バブル崩壊以降新築マンションは少しずつ価格を下げながら販売を維持してきた。しかしその事は中古マンションのストックを増加させそれほど遠くない将来に大量の廃墟が出現することになるかもしれません。質の劣る中古マンション再生させるか、最低でも、供給分の住宅ストックを減らすことが価格維持の前提です。
日本の住宅は既に量的には充足しており、少子・人口の減少のトレンドのなかでは、空き家が増加し、質の劣るストックが淘汰されることは止むを得ないことだと考えます。
従って今後は環境に重点を置いた政策が必要であり、住宅も然り、不動産のマネージメントを含めた質が抜きん出ていれば競争力は衰えないものです。
環境に配慮した良質の建築物を、リノベーションにより或いは建替えにより創出し、その需要により経済を活性化する方向に進むように思います。
不動産の評価も環境に配慮した度合いに応じてランク付した不動産価格評価になるのではないでしょうか?
【成熟した大国日本の活性化】
生存、安全といった低次の欲求が満たされると、より高次の生活の質の追求が始まり、ただエネルギー効率を高め、利便性や安全性が高いと言うだけでは、国民は満足しない、快適性、美しさと言った心理的、審美的な要素への配慮も必要となります。
景観改善、のための電線の地中化や高速道路の地下化と言ったインフラ整備、建築で言えば建物の品質レベルアップを目指し新たな建築基本法の制定に向けた動きが始まっております。
高度成長期に国土の均衡ある発展を重視した結果、地域の個性が失われてしまった。地域としては、地域の個性を生かした取り組みが必要であり、日本の原風景である里山などごく普通の景色や四季折々の表情豊かな自然と、そこに暮らすすがたは世界中での評価は高い、国土交通省の提唱する観光立国のポテンシャルとしては高いものがあります。
特筆する観光資源がなくても、そこだけにしかないオンリーワンの町並みや景観、ローカリティのある人々の暮らしの魅力を評価して認定されている、それが過疎化や近代化に悩む地方の村に大きな希望を与え、特に観光の側面で成功を収めている。
日本の魅力を海外に発信し、中国やインドをはじめ成長著しいアジアの中間層などの需要を取り込み「観光と環境」で日本の新しい経済発展モデルを構築してゆくことが「成熟した大国」の一つの方向として考えられます。
現政府は、3Kの取り組みで日本の再生を目指しております。「環境」「観光」「介護」の取り組みです。
日本全体では、人と地球に優しい国土作りを行い、成熟した大国を目指す方向に向かうものと思われます。
今後も皆様方のお役に立てる情報をお届け致します。
とまとハウス 代表者 粟野 則夫
宅地建物取引主任者・不動産コンサルタント技能者
ファイナンシャルプランナー・賃貸不動産経営管理士
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