師走となりました、本年は良い年でしたか? 来年こそは皆様方にとって、良い年で有ります事を念願致しております。
今月号は国内のビジネスの現状について考え、その方向性から賃貸経営に活かすための方策を考察したいと思います。
【日本型経営の終焉】
日本型経営とは
1) 政官業トライアングルの崩壊企業が政権政党に献金する、政治家はその多寡に応じて見返りを与える、そして、役人は通達行政を通じ業界に介入する仕組みが出来上がっていた。その為に談合等が象徴する通り全く競争原理が働かない状態であった。
2) 含み経営の崩壊地価と株価が一貫して上昇を続けていた時代は、企業の赤字が続けば土地、或いは株を売って利益を捻出し相殺出来た。しかし現在は、株、土地を持つ事自体がリスクとなった。
3) 株式の持ち合い解消企業買収の防止策名目で行われてきたが、その事が経営内容のチェック機能を喪失させた。シャンシャン総会が蔓延し、身内の独裁経営で、企業は仲良しクラブを続けてきた。
4) 官僚政治の終焉戦後の政治は役人が行なってきた事は事実であるが、常に官僚が正しいと言う神話は崩壊の途にある。以上の事は、現在大きな音を立てて崩れ落ちている状況であります。この崩壊の原因は、時代の趨勢でありますが、特に会計ルールが国際会計基準に変わった事による影響が大きいと思われます。 ①単独決算から連結決算へ ②土地、株式、社債は時価計上となった。その結果、減損会計となり、企業の遊休土地、株式等は値下がりした場合損失を計上する必要がでてきた。又、連結決算により不透明な損金を子会社に押し付ける等の決算ができなくなり、企業会計の透明性が高くなり、外国企業の投資が活発になった。その結果、弱者を守る政策が通用しなくなり、政治家、官僚の存在感が薄れてきた。 政権が代わり一時的には揺り戻しはあるが、市場経済への移行は止められない。その事は、我々も良く認識すべきであると思われます。
【消費者重視の流れ】
企業側の倫理で「良いものをつくれば必ず売れる」と思うのは時代遅れであり、売れるものをつくる事が必要である。マーケットから売れるものを見つけそれをつくる事である。 ビジネスはマーケットに聞けと言われるゆえんである。家電はコジマ、ヤマダ電機等の家電量販店が売る、薬、生活用品はマツモトキヨシを始めとする量販店が販売する時代となりました。全てはエンドユーザーと直結するビジネスが主導権を握る時代です。 今後はユーザーニーズを無視したビジネスは成り立ちません。主導権は企業から消費者に変わりました。 お客を最大限に尊重する事、その事を十分に理解する必要があります。
【付加価値経営への移行】
付加価値とは、100円で仕入れて100円以上で販売する。即ち投入した以上の価値をつくりだす、その事は外部から仕入れた物に手を加える、アイデアを加える等の何らかの加工をする事によりつくり出されます。それが付加価値です。 経営資源を投入し投入した以上の価値を生む製品やサービスをつくりだす事が付加価値である。付加価値を創出できない企業が多くなれば資本主義経済は破綻し、その国は滅びます。 マルクスは「富(付加価値)は長時間労働によって生まれると言った」しかしそれは間違いであった。付加価値は知識で生まれるものである事を理解する必要があります。
【実業と虚業】
老舗の教訓に「浮利を追わず」をよく見かけます、浮利とは投機のことであり、実利とは付加価値(加工して)によって得た利益の事である。加工しなくても、加工してもバランシート上では全く同じでありますが、浮利は全体のパイが拡大せず、勝つもの(利益を上げるもの)がおれば、必ず負けるもの(損を出すもの)が出る。 エンロン・ベアリングス、山一証券の破たん等で、それはゼロサムゲームに負けた結果です。 最近ではリーマンショックがありましたが、デリバティブ・CDS等は投機の道具と化しました。これからの時代は、汗を流し実利を求め付加価値を追求しなければ企業は存続しないでしょう。
【不動産賃貸業界への応用】
上記の現状を捉え、今後の当業界の動向を推察し今後の賃貸経営に活かして行くことが必要です。先ず、時代が大きく変わろうとしている、過去の常識が通じない時代に入った事を理解する。特に2011年から2015年に起こる事は予測が付かない事となる可能性が高いと思われます。 過去の延長線上で今後を判断する事はリスクが高いと思われます。この様な時代こそ、基本に戻る事が必要であります。虚業は当然のこと、戒める必要がありますが、常に正道を歩む事が大切であると考えます。 不動産(地価)は右肩上がりの傾向は反転し右肩下がりのトレンドとなっております。上がり下がりの波はありますが基本的には右肩下がりの傾向となっております。 賃料は地価の下落とは別に、入居中の賃料は下がらずタイムラグをおいて下がって行くものと思われます。又賃料は需要と供給によって決まる為に、今後の人口、世帯数の推移、人口移動、等を勘案すると一部の地域を除き下落傾向は続くものと思われます。 一方、ユーザーの賃貸ニーズは益々多様化し、キメ細かな対応が必要となるでしょう。ペット、楽器、バイク、車、園芸、菜園、読書、等それぞれの住まい方、趣味に対応した賃貸物件の供給、2030年頃には世帯数の40%近くになると言われております単身世帯への物件供給、子育て世帯への戸建て住宅等々、ニーズの多様化に対応して行く必要があります。 私は賃貸住宅に付加価値を付けるのは、ソフト面を担う管理会社にあると思っております。どの様なソフトを付けるかは智恵を絞ることが必要です。その為には、果たして不動産管理会社が顧客のニーズをしっかり把握し、適切な対応を行っているのか如何か? よく言われる事に「管理と仲介は利益相反である」と言われますが、何故管理会社が賃貸仲介店舗を持つ事が利益相反になるのか、私は聊か疑問です。 顧客ニーズを掴むのは賃貸営業を行っている営業社員が一番よく知っております。それを把握しない管理会社は、滅びゆく卸売業に良く似ております、実務はマーケットに聞く、その智恵もまたマーケットが教えてくれます。今後はエンドに近い業者が主導権を握るものと思います。家主様を大切と思うので有れば、入居者を満足させる事が必要です。良いヒントがあればご教授下さい。激動の時代、今後も家主様と共に勉強して行きましょう。
今後も皆様方のお役に立てる情報をお届け致します。
とまとハウス 代表者 粟野 則夫
宅地建物取引主任者・不動産コンサルタント技能者
ファイナンシャルプランナー・賃貸不動産経営管理士
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